小児歯科

小児歯科は乳歯が生え始めて永久歯の歯が全て終わるまでの時期、大まかには生後6~7ヶ月から12歳頃までの時期の歯科治療を指します。この体の成長も著しいですが精神の発達も著しく、その年齢にあった対応、処置、注意が必要となります。また小児歯科の目指すところは健全な永久歯へ導く、むし歯なく、綺麗な歯並びで永久歯を迎えるためのものと考えていただくと良いのではないのでしょうか。例えば、フッ素での予防は何のために行うのでしょうか?目的は勿論むし歯予防のためですが、むし歯予防によって何が起こり、むし歯が多いとどんな悪いことが起こるのでしょうか。一番に思いつくのはむし歯で痛くならないためです。ただ、歯はむし歯にならないためにあるわけではなく食べるための道具でもあります。また乳歯は綺麗に永久歯が並ぶために顎を発達させるためのツール、綺麗な歯並びを得るためのつっかえ棒という側面もあります。近年では、むし歯は減ったのに、歯並びの混み合った、叢生(そうせい)という歯並びが多くなってきています。何故でしょうか?それは、咬む、食べるという行為自体の変化や食生活、食文化の変化にあります。本来人間という動物の持つ咬み方、食べ方が失われてきていることにも原因です。

例えば生後5ヶ月程度になると卒乳(離乳)が始まりますが離乳食はどのように与えていますか?何歳で卒乳できていますか?離乳食を食べさせる時のスプーンの使い方は?食べる時の姿勢は?食べる時は椅子に座っていますか?姿勢良く食べていますか?ダラダラ食べていませんか?食べ物、飲み物を飲み込む際のベロの位置は正しいですか?などなど歯並びに大切なことはすでに5ヶ月ごろからの食べ方から原因となっています。

歯並びは唇の力、ベロの力、顎の大きさ、歯の大きさ、乳歯のむし歯、頬杖、鼻呼吸、しっかり唇を閉じるなどにより作られ、綺麗な歯並びを獲得するためにはこれらをバランスよく発達させることが重要になります。勿論、もともと生えてくる大人の歯が大きい、遺伝的なものなど仕方なく歯並びが悪くなってしまうこともありますがこれは全体の4割程度です。ほとんどは食生活、日常の癖などにより出来上がっています。ですので、子供の成長に合わせて顎や唇、ベロが発達するように促してあげることが大切となります。また、年齢に応じた歯科治療時の対応が重要で例えば1~2歳の子供であれば歯科治療に当然恐怖します。ただ、何でも怖いのかといえばそうではなく、見た目からくる恐怖や音による恐怖が強く、具体的な説明などは全く意味がありません。

機械の音、歯科医師、衛生士などの知らない大人、環境変化なども恐怖の対象になります。しかし分からないからといって静かに処置をすればいいというわけではなく、表情や、言葉の抑揚などにより安心させることもできます。また痛みに対しては非常に敏感でもあるのでもしむし歯ができてもその際の処置は怖くなく、痛くない範囲に抑え成長を待つという方法も必要で、ここで重要なのは子供に痛みを覚えさせず、歯科治療への恐怖を与えないことが最も重要となります。フッ素についても乳歯は生えたてが一番フッ素に対してよく反応し一番むし歯予防効果があります。

フッ素についてもただ塗れば良いわけではなく、2週間以内に4回のフッ素塗布により乳歯、永久歯に多少の差はありますが、20~40%の予防効果がある、家庭でフッ素うがいをすると40~60%ねむし歯予防効果があるなど科学的裏打ちを持ってフッ素予防を行うことが必要です。ただ、フッ素は間違って多量に飲み込みと毒にもなります。正しい使い方が必要です。
子供はフッ素予防というイメージがありますが、フッ素予防は大切です。ですがフッ素にるむし歯予防は綺麗な歯並びを作る第一歩だという認識を持つことが大切です。

  • 10歳から6-7ヶ月(下の歯の乳歯が生えるまで)

    歯が生える時期は多少個人差があるのでもし、この時期に生えてこなくても、12ヶ月までは様子をみます。12ヶ月たっても生えてこない場合は下の前歯の乳歯がない可能性があります。このころはまだ歯がないので歯磨きの必要はありませんが、ガーゼなどにより口の中の汚れを取ることは大切です。

    5ヶ月ごろから卒乳の開始が始まりますが、離乳食の甘みもコントロールする事も重要です。また、卒乳も大事ですが、段階を踏まずいきなり離乳食に代えると、将来の咀嚼、飲み込みの機能に影響がでると言われているので注意が必要です。最初の1ヶ月は離乳食は1日1回。2~3ヶ月は1日2回。9ヶ月後には1日3回離乳食にするのが理想的とも言われてます。無理のない範囲で少しづつ唇を使わせて食べることが大切です。勿論、例外もありますので成長に合わせることも大切です。

  • 26-7ヶ月から2歳8ヶ月頃まで
    (乳歯が生え始めてから生え揃うまで)

    この時期はあくまで一般的な時期です。数ヶ月程度の乳歯の生え揃うのが遅くなっても問題ありません。この頃からむし歯を考える必要が出てきます。離乳の際に甘い物をコントロールする事もここに繋がってきます。この頃にむし歯のなりやすいのは上の前歯の歯茎の際、歯の間です。まだ哺乳瓶を使う時期め一部絡んでおり哺乳瓶の中にジュースなど甘い飲み物を入れ与えるのはやめて下さい。

    哺乳瓶むし歯などと呼ばれ、哺乳瓶と甘い飲み物でできると言われるむし歯リスクを高めます。哺乳瓶むし歯の初期として上の前歯の歯茎の際に白い濁ったモヤがかかります。これを見つけたら歯科医師に相談しこれ以上進行しない様に予防する事が大切です。

    また初期のむし歯は治ることはありませんがしっかりプラークをコントロールしフッ素予防すれば進行を止められます。

    歯の間のむし歯予防には糸を使いしっかりプラークをとってあげると良いです。この時期に最も大切な事は食後に歯磨きをする習慣をつける事です。1歳を過ぎると歯ブラシを握る事が出来始めるので遊びの一環として歯ブラシを自由に使わせるのも良いです。ただこの頃はつかまり立ちもでき、転びやすい時期でもあるので、歯ブラシが喉に刺さったりしない様に、歯ブラシをくわえたままにしない様に等、保護者が目を離さない事が重要です。そしてむし歯予防の観点からは幼児の歯磨きの主役は保護者の方です。多少抵抗はありますが保護者の方が磨きのなおし、今日は泣いているから、などの例外を作らず毎日根気強く歯磨きをしてあげ、幼児に体で覚えさせるといいです。

    乳歯もどんどん生えてくる時期でもあるので奥歯溝はシーラントというフッ素含有樹脂を詰めて予防してあげることも大切です。

  • 32歳9ヶ月~6歳頃まで
    (乳歯が生えそろってから、下の前歯が抜けたり6歳臼歯が生え始める頃 まで)

    3歳~4歳の間は奥歯の溝にむし歯を作りやすくなります。奥歯をしっかり磨いてあげて下さい。この時期の理想仕上げ磨きを抵抗なく受け入れることです。また子供の歯の溝は一部深くなっている所もあるのでシーラントというフッ素の含まれた樹脂や、フッ素の含まれたセメントで溝うめするのもオススメです。3歳を過ぎるとうまくは磨けないけど自分で磨こうとし、この頃から歯磨きはむし歯予防になる事を少しづつ理解してきます。ただ、まだ手の運動機能は未熟で上手に磨けません。子供の自分でやるという気持ちを尊重しつつ、保護者の方が手本を見せる様に仕上げ磨きをする事が大切です。

    また歯垢染め出し液を使い方子供に見せてあげ、汚れが残っている事を示してあげ、保護者の方がお手本をみせるのもいいです。

    5~6歳には歯と歯の間のむし歯ができやすくなっており特に乳歯の一番奥と奥から2番目の間に発生しやすいです。
    歯の間の汚れをフロスで取ることが必要です。

    5歳くらいになるとフッ素での洗口ができるようになるので家庭でフッ素洗口を習慣にすると良いです。そしてフッ素洗口は昼間に行うより夜寝る前に行うと効果的です。
    <食事の注意>
    ・食事の時間を一定にし、間食などで食事時間がバラバラにならないようにする。
    ・激しい運動をすると一時的に食欲がなくなるので食事前にバタバタさせないようにする。
    ・食事は楽しく行い、これを食べなさいなどの強制は行わないようにする。
    ・テレビなどは見ないようにしダラダラ食事しないようにする。

  • 46際~12歳頃まで(永久歯生え始めから終わりまで)

    この時期に重要なのは6歳臼歯をむし歯にしないことです。6歳臼歯は生え始めてから生えきるまでに時間がかかるため、むし歯になりやすく歯茎の肉が長期に渡るときはあらかじめその肉をきり歯を露出させしっかり予防できるように促すことも重要です。この時期は乳歯と永久歯が両方あるので歯磨きしにくく、下の歯より上の歯が、ベロがわより頬側の歯が汚れやすいので注意すると良いです。

    また、乳歯の奥歯も生え変わる時期でもあるので特に歯の間にむし歯を作らないようにすることも重要です。この時期に歯の間にむし歯を作ると良好な歯並びを得にくくなることもあります。下の前歯は最初少し混み合ったように生えてくることもありますが、生理的なものであることも多いので様子を見ることもあります。上の前歯は少し隙間を持って生えたきますがこれも自然なことで、糸切り歯が生えてくるまで様子を見ると良いです。他の歯もどんどん生え変わるのでむし歯にあならないように注意が必要です。

    乳歯の奥歯の生え変わりにおいては順調に生え変わるよう乳歯の一部を削り永久歯が生えやすいようにコントロールしたり今後の生え方を推測し順調に乳歯から永久歯に生え変わるように促してあげることを行うにも良いです。将来に渡る歯並びが決定する時期でもあるにで定期的に生え変わりがうまくいっているか、むし歯を作っていないかなどチェックをすると良いです。